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大学の共同研究申込業務をGASで自動化した話【転記ミスゼロ・工数90%削減】

大学の共同研究申込業務をGASで自動化した話【転記ミスゼロ・工数90%削減】

大学職員として働いていると、「これ、絶対自動化できるのに」と感じる業務がある。

今回取り組んだのは、共同研究の申込業務だ。企業からWordで届く申込書の内容を、担当者が手動で契約書表紙に転記するという、年100件以上発生する繰り返し作業。Google Apps Script(GAS)を使って、この業務を丸ごと自動化した。


改善前:何が問題だったのか

まず、改善前の業務フローを整理する。

① 企業がWordファイルで申込書を作成・送付
      ↓
② 担当者が申込書の内容を目視で確認
      ↓
③ 契約書表紙(Word)を開き、申込書から手動で転記
      ↓
④ 誤字・転記漏れを確認・修正
      ↓
⑤ 契約書表紙を印刷・保管

一見シンプルに見えるが、問題は転記する項目数だ。

項目 内容
年間発生件数 100件以上
1件あたりの転記項目数 約30項目(会社情報・研究者情報・経費・連絡先 等)
主なリスク 転記ミス、記載漏れ、入力ミスによる契約書の不備

1件あたりの転記項目が約30項目。会社名・住所・代表者名から始まり、研究担当者の氏名・所属・職位、研究経費の内訳、連絡先情報まで、幅広い情報を一つひとつ転記していく。

単純作業なのに時間がかかる。そして、単純作業だからこそミスが起きやすい。転記ミスが発覚した場合は企業との再確認が必要になり、そのたびに業務全体が停滞する。


改善方針:GASで「転記そのものをなくす」

転記ミスをゼロにする一番の方法は、「転記をなくすこと」だ。

企業が申込書を作成する段階から、Googleフォームで直接入力してもらう構造に変える。入力されたデータはスプレッドシートに自動記録され、契約書表紙はそのデータを使って自動生成する。転記という工程を構造的に排除する設計だ。

改善後の業務フロー

① 企業がGoogleフォームにWebブラウザから入力・送信
      ↓
② 回答がスプレッドシートに自動記録(転記不要)
      ↓
③ 担当者がスプレッドシートのメニューから対象申込を選択
      ↓
④ 契約書表紙がシステムにより自動生成・プレビュー表示
      ↓
⑤ 印刷またはPDF保存

実装内容:GASで何を作ったか

今回構築した機能は大きく5つ。

1. Googleフォームの自動生成

申込に必要な全項目(7セクション・約30項目)のフォームを、スクリプトで自動作成する。手動でフォームを組むのは手間がかかるし、項目変更のたびに管理が大変になる。GASでプログラム的にフォームを生成することで、仕様変更にも柔軟に対応できる。

収集する情報は以下のとおり。

  • 基本情報:申込日・宛先学部
  • 申込者(企業)情報:会社名・住所・代表者等
  • 研究内容:研究題目・目的・研究期間
  • 研究担当者:大学側・企業側それぞれ複数名
  • 研究経費:直接経費・間接経費(大学負担・企業負担)
  • 連絡先情報

2. データの自動収集

フォームの回答はGoogleスプレッドシートに自動で記録される。これはGoogleフォームの標準機能だが、連携設定をGASで行うことで、フォームの再作成や項目変更時にも対応しやすくしている。

3. 申込書のプレビュー表示

スプレッドシートのカスタムメニューから対象の申込を選択すると、申込内容をプレビュー表示できる。担当者が内容を確認してから次のステップに進める設計だ。

4. 契約書表紙の自動生成

スプレッドシートに記録された申込データから、契約書表紙のHTMLを自動生成してプレビュー表示する。担当者はそのまま印刷するか、PDFとして保存するだけ。

これが今回の改善の核心部分だ。30項目を手動で転記する必要がなくなる。

5. 複数管理者への対応

スプレッドシートの共有機能を使い、権限を持つ管理者であれば誰でも同じ画面・同じ操作で業務を進められる。担当者が不在でも業務が止まらない体制になる。


改善効果:数字で見る成果

定量的な効果

指標 改善前 改善後 削減効果
転記作業時間(1件) 約20〜30分 約2〜3分(選択・印刷のみ) 約85〜90%削減
年間転記工数(100件) 約33〜50時間 約3〜5時間 約45時間削減
転記ミス発生リスク 高(手動入力) ほぼゼロ(自動生成)

※ 転記作業時間は担当者ヒアリングをもとに推計

年間で約45時間の削減。それ以上に大きいのが「ミスへの対応コスト」がなくなることだ。転記ミスの発見・修正・企業への確認、こういった突発的な作業が構造的に発生しなくなる。

定性的な効果

正確性の向上: 企業が直接入力したデータをそのまま契約書に反映するため、転記ミスが構造的に発生しない。「人間がコピーする」という工程がない。

業務継続性の確保: 担当者が不在でも、権限を持つ管理者であれば誰でも同じ操作で業務を進められる。属人化を防ぐ。

データの一元管理: 全申込データがスプレッドシートに蓄積されるため、過去案件の検索・参照が容易になる。「あの件いつだっけ」を検索で即解決できる。


技術選定の理由

今回GASを選んだ理由は明快だ。

項目 内容
プラットフォーム Google Workspace(フォーム・スプレッドシート)
開発言語 Google Apps Script(JavaScript ベース)
実行環境 ブラウザ(Chrome 推奨)
導入コスト 無償(Google アカウントのみ必要)
サーバー管理 不要(Google のクラウド上で動作)

導入コストゼロサーバー管理不要既存のGoogle Workspaceと完全統合

大学のような組織では、新しいシステムを導入するためのハードルが高い。IT部門の承認、予算申請、セキュリティレビュー……。GASはその全てを省略できる。既存のGoogleアカウントさえあれば今日から動かせる。

また、GASはJavaScriptベースのため、プログラミング経験があれば学習コストも低い。今後の改修を自分たちで行える点も重要だ。


今後の展望

今回の改善で転記業務という「痛点」は解消できた。次は以下の機能追加を検討している。

  • メール通知機能:申込受付時に担当者へ自動通知
  • ステータス管理:受付中・審査中・完了などの状態管理
  • 統計・集計機能:過去データの分析

特にメール通知は、現状だと「フォームに回答が来たことに気づかない」リスクがあるため、早めに対応したい。


まとめ

今回の業務改善を一言でまとめると、「転記をなくす設計」 だ。

ミスをゼロにしようとするなら、ミスが起きる工程そのものをなくすのが一番確実だ。GASはそのための強力なツールになる。

  • 年間100件以上の繰り返し業務
  • 1件あたり30項目の手動転記
  • 導入コストゼロ
  • 工数を約90%削減

大学・行政・中小企業など、「Excel・Wordで回している業務」が残っている組織には、同じアプローチが使えるケースが多いはずだ。GASとGoogleフォームの組み合わせは、意外と強力なソリューションになる。


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